キャノン
東京麻布のアパートの一角に精機光学研究所を設立。国産初の高級35mmレンジファインダーカメラの試作機「KWANON=カンノン(KASYAPA=カサパレンズ付き)」を製作したが、現存するものはなく、「カンノン」はまさに幻の試作機となった。 「カンノン」を市場に投入すべく試行錯誤が重ねられるが、肝心のレンズがない。苦心の末、日本光学工業株式会社(現/株式会社ニコン)のニッコールレンズの供給を受けることとなり、1936年(昭和11年)2月、キヤノンの第1号機「ハンザキヤノン=標準型ニッコール50mm F3.5付き」を発売した(1935年10月発売説もある)。ハンザは、精機光学研究所と独占販売契約を結んだ近江屋写真用品株式会社の登録商標。キヤノンは、「聖典、規範、標準」を意味し、正確を基本とする精機光学の新しい商標であった。 当時、カメラ業界ではライカの模倣品などと言われた「ハンザキヤノン」だが、初の国産高級35mmカメラであることは紛れもない事実であり、カメラ業界内外から大きな関心と期待が寄せられることになる。 精機光学研究所は、その後1936年(昭和11年)6月に目黒区に移転。日本精機光学研究所と名称を変更した。 「ハンザキヤノン=標準型」に続いて、1939年(昭和14年)2月、「最新型」「普及型」、同年末には「新標準型」を発売。「最新型」以降、その商標名からハンザの名が消え、「キヤノン」となる。もっとも、近江屋との関係が途切れたわけではなく、その後も近江屋の支援は続けられた。  1937年(昭和12年)の半ば頃からは、自社製レンズ製作を望む声があがり、精機光学初の光学技士古川良三は、試作レンズの「f=50mmF4.5」をはじめ、「f=50mmF3.5」や「f=135mmF4」などのレンズを生んだ。また16mmシネカメラ用「f=45mmF0.85」などを試作したほか、X線間接カメラ用レンズにもたずさわった。これらのレンズに冠せられた名称は「セレナー=Serenar」。セレンには澄んだという意味があり、月面にある海に名前に由来してい
カメラ名 ハンザキャノン 製造年月 1936
製造国名 日本 製造メーカー 精機光学
使用フィルム 135 サイズ・枚数 2.4×3.6cm 36枚撮り
シャッター FP スピード B,1/20〜1/500
レンズ名 ニッコ−ル 焦点距離 50mm F3.5
装着されたレンズは民生用として初めて取付けられたニッコール5cmF3.5、距離計連動の光学系、焦点調節機構を含むマウント部も日本光学によって賄われていた。 ファインダーは距離計窓とは別の逆ガリレオ式で、ボタン操作で飛び出すところからビックリ箱と呼ばれ親しまれた。
カメラ名 キャノンS 製造年月 1939年
製造国名 日本 製造メーカー 精機光学
使用フィルム 135 サイズ・枚数 2.4×3.6cm 36枚撮り
シャッター FP スピード T,B,1〜1/500
レンズ名 キャノン 焦点距離 50mm F3.5
標準型に1/20秒以下、l秒までのスローシャッタ一を組み込み高級仕様化した機種。ニッコールレンズも大口径のF2(3群6枚構成ゾナータイプ)、F2.8(3群4枚構成テッサータイプ)、さらにF4.5(3群4枚構成テッサータイプ)がF3.5付きに加わり、国産唯一の高級35mmカメラに相応しいラインナップとなった。スローシャッター用のガバナー(遅延機構を組み込むスペースの関係から前面部にあったフィルムカウンターは巻き上げノプの基部へと移され、内部機構の変更から一体成形だった段付き上カバーが、おとなしげな二体部品物へと変わった。スローシャッターダイアルは操作上の理由からレバー回転式が採用されていた。
カメラ名 キャノンJII 製造年月 1946年
製造国名 日本 製造メーカー キャノン
使用フィルム 135 サイズ・枚数 2.4×3.6cm 36枚撮り
シャッター FP スピード T,B,1〜1/500
レンズ名 ニッコール 焦点距離 50mm F3.5
戦前、戦中に作られた普及型(J型)の部品を使い戦後組み立てられたものを戦後普及型(J II型)という。
カメラ名 キャノンV 製造年月 1951年
製造国名 日本 製造メーカー キャノン
使用フィルム 135 サイズ・枚数 2.4×3.6cm 36枚撮り
シャッター FP スピード T,B,1〜1/1000
レンズ名 セレナー 焦点距離 50mm F1.9
UC型に改良を加え、巻き上げを完了したシャッター幕をつねに定位置で掛け止めできる機構を開発、その結果、高級35mmカメラとしてのステータスであると同時に不可欠でもあった待望の1/1000秒の高速シャッタースピードを搭載することができた。 二重像合致式連動距離計と3段階に視野倍率を可変する回転式逆ガリレオビューファインダーを光路内に一体化した一眼式。使用する金属材料の最適化、機械加工の高精度化、部品精度の標準化が進み、塗装・メッキ、合成皮革貼りの諸技術も一段と向上、仕上げの良さも第一級になった。
カメラ名 キャノンWSb 製造年月 1952年
製造国名 日本 製造メーカー キャノン
使用フィルム 135 サイズ・枚数 2.4×3.6cm 36枚撮り
シャッター FP スピード T,B,1〜1/1000
レンズ名 セレナー 焦点距離 50mm F1.9
新製品の開発は途切れることなく続き、そうした中で名機が誕生する。「IV Sb型」である。1952年(昭和27年)12月に登場した「IV Sb型」は、35mmレンジファインダーカメラとして、世界で初めてスピードライトに同調する機能を搭載していた。1954年(昭和29年)3月には、改良を加えた「IV Sb改型」を発売。「IV Sb改型」は、2段重ね構造のスローガバナーによる1/15秒シャッターを塔載し、シャッタースピードが近似値的な倍数系列を実現。絞り値も倍数系列となり外部露出計とも連動しやすく、ライカにも劣らぬ名機として高い評価を受けることになった。 の諸技術も一段と向上、仕上げの良さも第一級になった。
カメラ名 キャノンXT・VL 製造年月 1956年
製造国名 日本 製造メーカー キャノン
使用フィルム 135 サイズ・枚数 2.4×3.6cm 36枚撮り
シャッター FP スピード T,B,1〜1/1000
レンズ名 キャノン 焦点距離 50mm F1.4
標準型の発売から20年間続いた底部落とし込みフィルム装填方式(旧ライカタイプ)から、裏蓋開閉式へと大きく変わった最初の機種。IV型シリーズの後継機種という位置づけからV型の名称になったが、セルフタイマーの内蔵、3段変倍ファインダーの仕様変更、巻き上げ機構など全く新規のコンセプトによって開発された。 ファインダーの視野倍率は時代の要請に沿って広角35mmレンズ用の視野倍率が内蔵され、ハーフミラー・プリズムには高反射性の金メッキを施し、従来比2.5倍の明るい視野を確保した。VT型は、V型シリーズの先鞭を切ったが、巻き上げは上部レバーによる回転式ではなく、迅速巻き上げに効果のあるトリガー(銃の引き金)を底部に採用し、差別化を図った。VT型のTは、そのTriggerの頭文字を意味する。 その後レバー巻き上げのVLが発売された。
カメラ名 キャノンL1−L3 製造年月 1957年
製造国名 日本 製造メーカー キャノン
使用フィルム 135 サイズ・枚数 2.4×3.6cm 36枚撮り
シャッター FP スピード T,B,1〜1/1000
レンズ名 キャノン 焦点距離 50mm F1.4
VT Delux型と同時に発売され、底部トリガー巻き上げの機構を、上部レバー回転式に変えセルフタイマーを省略した機種で、突起部品のないスッキリとした端正な外観デザインが好評であった。通産省が制定したばかりのグッドデザイン賞の第1回をカメラとして初めて、8mmシネカメラのキヤノン8Tと共に受賞した。 発売当初のシャッター幕はゴム引きの布製であったが、後に耐久性にすぐれ、太陽光による焼損事故も起きないステンレス製の薄膜に変更した。L2は最高速のシャッタースピードを1/500秒に抑え、セルフタイマーを省略、フラッシュシンクロの接点をFP単独とした。L3はL2型からフラッシュシンクロ機構を省いた低価格な普及機種。
カメラ名 キャノンYL・YT 製造年月 1958年
製造国名 日本 製造メーカー キャノン
使用フィルム 135 サイズ・枚数 2.4×3.6cm 36枚撮り
シャッター FP スピード T,B,1〜1/1000
レンズ名 キャノン 焦点距離 50mm F1.4


倍数系列の等間隔目盛り、1軸不回転シャッターダイアル式を採用した最初の機種。ファインダーの視野倍率を変える機能は、広角35mmレンズ用位置で0.65倍、50mmレンズ用位置では等倍、そして、測距用の拡大位置で1.55倍になる3段変倍式であった。それらの視野内には50mmと100mmでの視界を示すブライトフレームが内蔵されており、レンズ繰り出しに連動してパララックス(視差)は自動的に補正された。35.50mm以外の交換レンズ使用時には、アクセサリーシューに設けられたパララックス補正ピンによって、装着した専用、汎用ユニバーサルファインダーが上下動して補正する仕組みになっていた。フラッシュシンクロはFP、M-F、Xの全接点を備えたフルシンクロ、Xは高速の1/55秒で同調する性能だった。 カメラ名のYLはレバー巻上げ、YTはトリガー巻上げである。
カメラ名 キャノンP 製造年月 1959年
製造国名 日本 製造メーカー キャノン
使用フィルム 135 サイズ・枚数 2.4×3.6cm 36枚撮り
シャッター FP スピード T,B,1〜1/1000
レンズ名 キャノン 焦点距離 50mm F1.8
P型はポピュレールという機種名から分かるように、高級機の大衆路線カメラといった、一見、矛盾したような性格の機種であった。製造コストのかかる3段変倍式のファインダー機構を止め、広角35mmレンズ用の全視野内に50mmレンズ用と100mmレンズ用の視野枠をルミフィールド式で示す等倍型のパララックス自動補正式として簡略化した。つまり、焦点距離35mmの広角レンズから中望遠の100mmレンズまでを使用するユーザーをターゲットにしていた機種で、V型シリーズ以降で採用してきたアクセサリーシューに設けられていたパララックス補正ピンは省略された。 狙い通り、機能対価格のマッチングが功を奏して10万台弱が生産・販売された。
カメラ名 キャノン7 製造年月 1961年
製造国名 日本 製造メーカー キャノン
使用フィルム 135 サイズ・枚数 2.4×3.6cm 36枚撮り
シャッター FP スピード T,B,1〜1/1000
レンズ名 キャノン 焦点距離 50mm F1.8
VI型シリーズの後継機種でキヤノン初のアラビア数字が型式名に使われた。二重像合致式連動距離計と倍率0.8倍固定式35mmレンズ用、50mmレンズ用、85mm/100mmレンズ用、135mmレンズ用にと視野枠を手動式で4段階に変えられる採光ブライトフレーム付きパララックス自動補正式ユニバーサル・マークファインダーによる一眼式、有効基線長は47.2mm この時期、レンズ交換式の高級35mmカメラは、交換レンズの制約を受けない一眼レフ式へと大きく移行していた。キヤノンも既にキヤノンフレックスを発売していたが、距離計連動式は広角レンズ使用時での速写性にすぐれ、シャッターチャンスにも即応できる特性などからニーズは依然として健在であると判断した。7型はVI型までで実現できなかった露出計を組み込むこと、35mmから135mmまでの各交換レンズに対応できるファインダー機構を取り入れること、同時に開発を進めていた夢の超大口径50mm F0.95レンズを装着すること等が開発の基本構想であった。この7型は、中級機市場にキヤノンが初参入したキヤノネットと共に第7回フォトキナで発表展示された。
カメラ名 キャノン7S 製造年月 1965年
製造国名 日本 製造メーカー キャノン
使用フィルム 135 サイズ・枚数 2.4×3.6cm 36枚撮り
シャッター FP スピード T,B,1〜1/1000
レンズ名 キャノン 焦点距離 50mm F1.8
キヤノンの高級35mm一眼レフカメラは、キヤノンフレックスに始まるRシリーズからFLシリーズへと進み、この7S型と同時発売になったユニークな TTLマニュアル測光のペリックスを含めて、既に7機種を市場に送り届けていた。かかる、市場での距離計連動カメラの先細り傾向の中で7S型は7型の後継 機として発売された。7型の基本性能と機能を変えずに露出計の測光素子をセレンからCdSへと変更、露出計自体をリニューアルした。 7型で要望の多かったアクセサリーシューも装備し、三脚ねじも移動した。標準型(ハンザ・キヤノン)に始まるキヤノン距離計連動式の高級35mmカメラの歴史は、32年という時を刻み多くのユーザーに支えられながら、さまざまな事象に遭遇し数多くの心に残る名作を写真記録として捉えながら終焉を迎えたのであった。